【書評・紹介】『探偵はもう、死んでいる。』 二語十

2022年6月5日小説,NL(HL、異性愛),SF小説,探偵小説,高校生(恋愛),このライトノベルがすごい!,バトル・アクション,ミステリー,ライトノベル,恋愛小説テレビアニメ,二語十,うみぼうず

シリーズ累計70万部突破!
探偵の死後、
残された助手と探偵を巡る物語。

探偵はもう、死んでいる。1巻の表紙

著者:二語十
イラスト:うみぼうず

ストーリー
描写
キャラクター
ラブコメ度
推理の意外性
独自性
電子書籍 有り
他のメディア展開 コミック、テレビアニメ
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あらすじ

高校三年生の俺・君塚君彦は、かつて名探偵の助手だった。
「君、私の助手になってよ」
――始まりは四年前、地上一万メートルの空の上。
ハイジャックされた飛行機の中で、俺は天使のような探偵・シエスタの助手に選ばれた。
それから――
「いい? 助手が蜂の巣にされている間に、私が敵の首を取る」
「おい名探偵、俺の死が前提のプランを立てるな」
俺たちは三年にもわたる目も眩むような冒険劇を繰り広げ――そして、死に別れた。
一人生き残った俺は、日常という名のぬるま湯に浸っている。
……それでいいのかって?
いいさ、誰に迷惑をかけるわけでもない。
だってそうだろ?
探偵はもう、死んでいる。

「探偵はもう、死んでいる。」 二語十[MF文庫J] – KADOKAWA

受賞歴

第15回MF文庫Jライトノベル新人賞 最優秀賞
ラノベ好き書店員大賞2020文庫部門 大賞
このライトノベルがすごい!2021文庫部門 第4位
このライトノベルがすごい!2021新作部門 第3位

書評

面白い作品は面白いと評価する。
たとえ自分の好みに合致せずとも。
たとえどんどん解釈違いが生まれていこうとも。
読み終わって開口一番発したのはそんな言葉です。

まあ、初めてこの作品と出会ったのはアニメなんですけどね!

読む前、というかアニメを見る前は、"死んでいる"って言っても
すぐ生き返るとか
何かの比喩とか
あるいは死ぬ前の物語とか
そんな風に思っていました。

ですが、決してそうではありません。
だってもう、あらすじにも書いてありますしね。
「探偵はもう、死んでいる」って。

私は恋愛小説において2人が死別する話が嫌いなわけではありません。
むしろ好きと言ってもいいかもしれない。
しかしその一方で、死後主人公が他の人物とどうこうなるのが、どうしても好きじゃないのです。
この1巻はそういう作品であるとも言えます。

だからはっきり言って好みじゃないんです。
好みじゃない。
性癖と全く合わない。

しかし、面白い。
面白いSF(ファンタジー?)でもあり、
面白いミステリーでもあり、
そして面白いラブコメでもある。

白髪碧眼でマスケット銃を扱う名探偵の少女。
可憐で、美しく、そして可愛い。
シエスタ。
スペイン語で昼寝を意味する名を持つ彼女に、全ての読者が惹かれることでしょう。
しかし、探偵はもう、死んでいる。

主人公はその探偵の助手・君塚君彦。
18歳の高校生。
前述したように、探偵はもう死んでいて、これは死後の物語。
探偵亡き後、その助手が仲間たちと事件を解決していく物語。
推理あり、アクションあり、ラブコメあり。
しかしそこにメインヒロインたる探偵はいない。

一章の結末からしてずるいです。
一読者の私にとっては最悪の結末ですが、物語としては最高の結末であり展開でしょう。

二章の解決からしてずるいです。
今は亡き探偵の影を追い求め、その探偵を超えていく解決は、ある意味残酷であり素晴らしい。

三章の展開からしてずるいです。
そんなことをされてしまったら、もう文句の付けようがない。

章の間に入るモノローグからしてずるいです。
ずるい。

そんな重たい話のはずなのに、テンポよく進むコメディな会話。
と思ったらいきなり探偵はもういないという事実に改めて気付かされる展開。

メインヒロインたる探偵の描写が、キャラクターが、全てが素晴らしいにも関わらず、
その探偵はもう、死んでいる。
しかしそれでも、彼女が遺したものもある。
結局ずるい以外に言葉がないです。

ミステリーという評価で言えば、正統派からは外れていると思います。
如何せんSF、というより最早ファンタジー?な要素もふんだんにあるので。
しかし、推理に必要な情報は全て出揃っています。
あとはどう組み立てるか。

個人的には、ミステリーとして推理を楽しみに読むよりも
ストーリーやラブコメ、会話劇という観点で読むべきだと思う本です。
何よりライトノベルですしね。

名探偵が死んだ後の物語。
残された助手の物語。
是非お読みください!

なお、まとめ買いするならアニメイトがお得です!

文庫本

電子書籍

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ二段。