リゼロのIFルートを一挙紹介

2023年6月7日特集長月達平,小説家になろう

『Re:ゼロから始める異世界生活』は書籍が販売されていると同時に、小説投稿サイト「小説家になろう」にも掲載されています。
両者の違いの一つが、web版で4月1日のエイプリルフールに投稿されるIFルートの存在です。
私は明日にも投稿があるのかな、と楽しみにしながらこの記事を書いています。(現在2023/3/31)
普段は書籍しか読まない読者だとしても、これに関してはネットで読むことをお勧めしたいです。
では詳しく解説していきます。

IFルートとは、名前の通り本編と繋がらないIFの物語を描いた短編(数万字程度)であり、様々なものが投稿されています。
コメディ要素が強くて面白いものもあれば、最も印象的なのは狂気に堕ちたスバルを描いた悲劇でしょう。

本編では少なくとも表面上は問題無さそう(?)なスバルですが、負荷を考えればむしろ完全に狂っていて当然のように思います。
僅かな違いで本編から分岐し、それぞれ異なる歪み方をした上で訪れるとんでもない悲劇は、どれもある種美しいです。
いずれの話にせよ、IFルートでしか味わえない魅力もあるので、本編ではあり得ない話を読むのに違和感を感じるという方以外は、以下を参照して読んでみて下さい。(ネタバレを避けるため、少なくとも投稿より前の話までは読んでいるなら、ですけど。)

なお、作者によれば各ルートにはそれぞれヒロインとテーマの大罪が割り振られているようです。
それに従えば、本編はヒロインがエミリア、テーマとなる大罪は「嫉妬」となりますね。

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『ナツキ・レム』

ヒロインはレム、テーマとなる大罪は「怠惰」。
分岐点は三章『ゼロから』で、スバルとレムが共に逃げた世界になります。
唯一本編の書籍版に掲載(9巻)されている話ですね。
本編からかけ離れた『学園リゼロ』を除けば唯一幸せそうな話でもあり、節分の日にその続きが複数投稿されています。
しかし勿論、その背景でエミリア陣営は壊滅しています。
2人の子供リゲルとスピカを交え、いい年をしたスバルによる賑やかな日常は本編では有り得ない形の幸せです。

なお、初投稿のIFルートである本作は2013年の4月1日、同日にあの第三章『竜車での一幕』の公開があった後に公開されています。
残念ながら私は当時から読んでいた訳ではありませんが、感想欄から当日の阿鼻叫喚ぶりが楽しめます。

『胡蝶之夢』

ヒロインは王戦候補者全員、テーマとなる大罪は「色欲」、だったらしいです。
というのも現在ではその内容は削除され、代わりにエキドナが胡蝶之夢について語っている文となっています。
大勢と恋仲になる話は作品とずれすぎていたからでしょうか。

『学園リゼロ』

ヒロインはエミリア、テーマとなる大罪は「虚飾」に相当します。
主要登場人物が同じ学校に通っているという設定のパラレルもので、完全にコメディタッチ。
キャラが幸せになっていても許せる方はお読みください、だそうです。
当然スバルも楽しそうに登校しており、『ナツキ・レム』同様に複数話投稿されていて、有り得ない世界の賑やかな日々が面白いですね。
印象はまるで違いますが。

『ゼロカラカサネルイセカイセイカツ』

ヒロインはエキドナ、テーマとなる大罪は「強欲」。
想像した方も多いであろう、四章でエキドナと契約した場合の物語です。
誰も欠けてはいないものの、予想以上に酷い状況が叩きつけられます。
死に戻りをひたすら繰り返す狂気の結果、変わり果てた陣営の姿とは。

『ゼロカラアヤマツイセカイセイカツ』

ヒロインはエルザ、テーマとなる大罪は「傲慢」。
分岐点はなんと一章で、ラインハルトの助けを呼べなかった場合です。(ただし内容的には五章のネタバレ有り。)
他の章に比べればまだましに思える一章ですが、突破のために死を繰り返したことで、「サテラ」へ強い執着を抱く変わり果てたスバルが描かれます。
暗躍するスバルの取った衝撃的な行動とは。
最後のシーンが強く印象に残り、おそらく特に人気が高いと思われる作品です。

『ゼロカラオボレルイセカイセイカツ』

テーマとなる大罪は「憤怒」、ヒロインは伏せておきます。
分岐点は二章、自殺を選べずにベアトリスにより逃がされた世界。
レムの拷問により極度の人間不信となったスバルは、秘密結社のボスとして君臨していました。
ラインハルトとの激突による崩壊の最中、溺れるスバルは果たして何に縋るのか。
人物描写の魅力と完成度の高さ、美しさの点から私は一番好みです。

『ゼロカラツギハグイセカイセイカツ』

ヒロインはシャウラ、テーマとなる大罪は「暴食」。
分岐点は六章、死者の書の誘惑に逆らえず、殺人を選んでしまった『スバル』の記憶を取り戻す旅が描かれます。
スバルから狙われる、仲間であり親しかった筈の相手の苦悩が堪りません。
シャウラは、幸せそうですけれど。

『ゼロカラミマガウイセカイセイカツ』

他のルートとは違い、ヒロインやテーマの大罪は明言できません。
本編の分岐というよりはパラレル的な内容になります。
何が違うのかは予め知らずに読む方がいいと思うので伏せておきます。
あとがきによると重要な伏線があるかもとのことですが、名前関連でしょうかね。

web版以外のIFルート

本編の書籍版に含まれている『ナツキ・レム』以外に、web版以外で公開されたルートもあるので紹介します。
特典小説として、『ナツキ・レム』の前日譚『イフカラハジメルイセカイセイカツ』と、加筆された『ゼロカラカサネルイセカイセイカツ』があります。
また、ゲームアプリ『Re:ゼロから始める異世界生活 Lost in Memories』において、『ゼロアガナウイセカイセイカツ』のストーリーが公開されました。
分岐点は三章、目の前で殺されたレムの「生きて」という言葉に縛られ、ペテルギウスに復讐する20年後のスバルがゲーム内で描かれます。

書籍化はされるのか

まず、前述の通り前例があるのでアニメのDVDなどの特典の形で書籍化されることはありそうです。
そこで気になるのは、そうした特典やwebにしかないIFルートを纏めて、短編集や外伝と同じように一般販売する形で書籍化されるかどうか。

一般的に考えて、IFルートは本編とはあまりに別物であるために、書籍化は難しいのではないかと思います。
まず間違いなく、全てのルートを網羅して書籍化されることは無いでしょう。
『胡蝶之夢』や『学園リゼロ』が一般販売されることは考え難く、かつ全部合わせれば小説1巻には到底収まらない量がありますから。
しかし、特典としてであれ『カサネル』などが書籍となったことと、その原因であろう作品と読者の特殊性を鑑みるに、可能性が無いとは言えないのも確かです。
私はIFルートを纏めた本は欲しいと思っています。

とは言え、その高くはない可能性に期待して読むのを待つのは勿体無いでしょう。
興味が湧いた方は是非、該当のリンクから読んでみて下さい。

ここ最近のweb版の更新は止まっているのであるかどうか分かりませんが、明日4/1の更新も楽しみに待ちたいです。
『ミマガウ』や『学園リゼロ』の続きでしょうか。それともまさかの新作でしょうか。
ちなみに、当日思いついて書いた、というあとがきの記述が複数見られますが、長さと完成度を思えばやはり書く速さがおかしくないですかね。

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litmus paper

理系の大学生。好きなジャンルはミステリーやファンタジー。基本的には幅広く読んでいますが、(高校時代の経験から)今は青春小説を苦手にしています。