『リゼロ』考察その一 スバル、アル、及び死に戻りについて

2023年6月30日シリーズもの,ネタバレ含む長月達平

『Re:ゼロから始める異世界生活』には、魅力的なだけでなく考察しがいのある人物が数多く登場します。
その中でも特に謎や伏線が多い人物の一部として、今回はスバル、アルについて考察していきます。

当然、「死に戻り」や「領域」(?)の権能と魔女因子、大罪司教「傲慢」候補や400年前の謎など、作品の根幹部分が関わってきますね。
そのため、最新の本編第七章まで、更には外伝や短編集など(今回は特にEx5『緋色姫譚』)のネタバレを大いに含みます。
そこまで読んでいない方は以下の記事をお勧めします。

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ナツキ・スバル

しっかりと内面の描かれる主人公が多くの謎を秘めている、というのは面白いことですね。
まずは彼の人物像についてから述べたいと思いますが、長い作中で最も描写されていて、その分詳細かつ複雑なその内面をここですべて述べることなど到底できません。
これを読んでいる方はある程度スバルのことやその魅力は分かっているでしょうから、その一部を書くに留めます。

先に述べた作中人物一であろう内面の複雑さそれ自体が、私は彼の魅力の一つであり、この作品らしいところだと思います。
基本的には人間の心情というのはそう簡単ではありませんからね。(人の行動だって結局は単純だ、という意見にも同意できますが。)
作中、彼のみっともない弱さや力では無い強さ、様々な歪みや秘密などを全て理解する人物はいませんが、それぞれについて「理解者」もいるのは面白いところです。
スバル本人が意識しない部分もそれによって見えてきますから。

現状、他者からの指摘で気になるのは、表には出さず、苛まれている罪の意識。
六章でいきなり明かされた自傷行為には驚くと共に、悲しくも納得してしまいます。
狂わないスバルが異常、というルイの意見の方がスバルの感覚より頷けるくらいです。これはアルにも同じことが言えます。
三章・四章・六章などでの歪みの克服と成長を果たしてきたスバルですが、これについては今後どうなるのか期待です。

さて、彼が秘める謎についてですが、その中心には「嫉妬の魔女」由来であろう魔女因子と権能があると思います。
六章での描写から、大罪司教から獲得したものを除き、1種類の魔女因子を元から持っていたことは明らかです。
権能として「死に戻り」を発現させている因子の候補は、「傲慢」か「嫉妬」のいずれかでしょう。
すなわち、暴食の大罪司教のように「嫉妬の魔女」から因子を分け与えられているか、空席である傲慢の大罪司教候補か、ということになり、どちらにしても大いに不穏な要素です。
四章・七章のように「嫉妬の魔女」が内から出てくる可能性を考えれば今更かも知れませんけど。

七章での「死に戻り」に起きた異常の描写からは、驚きの情報が明かされましたね。
魔女から離れ、スバル単独で行使する権能は普段の「死に戻り」に比べて不完全であり、「死に戻り」の行使には魔女からの干渉が必要であると。
エキドナの考察通り、セーブポイントの決定が明確に魔女の意思に左右される可能性も高まったと言えます。

その原因であろう、400年前の出来事についてはまだまだ分かりませんね。
「嫉妬の魔女」及びサテラからの一方通行ではなく、無意識化ではまるで相思相愛であるかのように感じられます。
となるとエミリアとサテラの類似性がより気になりますが、それはまたの機会に。

400年前に関しては他にもフリューゲルとの類似が描かれています。
長い間シャウラを置き去りにするなどスバルらしからぬ行動はあっても、そのシャウラの想いを考えれば、全くの別人であるとは思えません。
墓所の魔女たちからはフリューゲルとは別人として扱われるものの、「賢人候補」と呼ばれたり、複雑な関係が見え隠れします。
六章の描写から魔女因子の獲得も関わってきそうです。
間違いなく作品の根幹部分に当たるでしょうから、シャウラの言う再びの「出会い」を楽しみに待ちましょう。

アルデバラン

明らかに謎だらけの人物。
「死に戻り」に似た「領域」(?)の権能を保有しており、謎の行動からスバルと同等以上で最有力の傲慢の大罪司教候補です。
『緋色姫譚』で明かされた情報は彼を知る上で大きく、年齢と矛盾するものの間違いなく400年前の関係者です。
彼がそこで口にした「先生」はエキドナかフリューゲルでしょうか。彼自身もフリューゲルの候補ですが。
アラキアを救ったことが予期せぬ結果を生むかも知れない、という独白から、「領域」の行使又は彼の干渉による世界の変更は、「叡智の書」などの予知する未来を変える可能性がある、というのは大きなポイントになります。

これは「叡智の書」を持つロズワールの予定を狂わせたスバルにも適応されると考えられるからです。
そうすると、三章でアルがスバルとレムに見せた激昂の原因も予想できます。
スバルの干渉が無ければ二章でレムは死に、ラムが生き残る。
おそらくアルはそうなる結果を知っていたのでしょう。
それが激昂に繋がる理由はまだ分かりませんが。
彼の経験によるのだろうその理由は、「昴(プレアデス星団のこと)の後星」を意味するアルデバランの名を嫌う理由と共通していそうです。

他にも大きな謎は、スバルとの類似性。
権能以外にも、アルデバランの名や頑なに隠す「目つきの鋭い」顔など、伏線は沢山あります。
単純な答えとしては、エキドナの技術などによる命の複製で、スバルとはクローンの関係、なんてものが考えられますが果たして。
そうであったとしても、400年前に「嫉妬の魔女」へ敗北したらしき描写は依然として謎です。

また、七章では子供状態のスバルが「死に戻り」に加えアルの「領域」らしき権能が発現した一方、アルが権能を失っていました。
後から得た「怠惰」の権能をスバルは使用できていたので、この差には注目です。(ただし、「怠惰」の使用は「嫉妬の魔女」による発見後である点には留意。)
可能性としては権能の獲得方法が違うか、本来はスバルのみが持つ権能で元に戻ったなどが考えられます。
完全な「死に戻り」同様、魔女の干渉が必要ということも考えられますが、アルの発言などの描写的にはその可能性は低そうです。

七章では上記以外にもスバルにかける言葉など彼の謎に関わる描写が多く、それらがこれから明かされていくことに期待ですね。

今回の考察記事は以上になります。
楽しめた方はよければ他の記事もご覧ください。

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litmus paper

理系の大学生。好きなジャンルはミステリーやファンタジー。基本的には幅広く読んでいますが、(高校時代の経験から)今は青春小説を苦手にしています。