【書評・紹介】『上総広常 房総最大の武力を築いた猛将の生涯』 千野原靖方

教養書,伝記,歴史

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にて佐藤浩市が熱演
上総介広常の生涯に迫る一冊

著者:千野原靖方

読みやすさ
わかりやすさ
電子書籍 無し
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あらすじ

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で話題沸騰の上総広常、初の評伝!
関東屈指の勢力で源頼朝の挙兵で第一の功労者ともいえる活躍をみせるも、頼朝の重臣に暗殺されるという非業の最期を遂げてしまった武骨な猛将・上総広常。
本書では房総の中世史を長年研究してきた著者が、広常の激動の生涯を追うとともに、勢力基盤や広常が率いた武士団の実態、常陸佐竹氏や奥州藤原氏との関係を追究し、謎多き実像を解明する。関連史跡の写真も多数収録。

戎光祥郷土史叢書01 上総広常 房総最大の武力を築いた猛将の生涯 歴史、城郭、神道など書籍の出版・販売|戎光祥出版株式会社 (ebisukosyo.co.jp)

書評

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』
ご覧になられましたか?

もし見ていないのなら、絶対に見るべきです!
これほどまでに面白く感動的で文句のつけようがないドラマはないでしょう。

そんな『鎌倉殿の13人』。
前半の最大の見せ場となったのが、本書で語られる上総介広常の誅殺シーン。

佐藤浩市さん演じる上総介広常が、中村獅童さん演じる梶原景時に斬られる。
それを見ながらも手出しができない北条義時を始めとする御家人達。

広常の手習いが最期の手紙への伏線だったなど、涙なしには見られない回でした。

また他にも、武衛呼びなどで視聴者の話題を集め、その死後には「#上総介を偲ぶ会」がトレンド入り。上総介ロスが叫ばれるなど、本当に視聴者に愛されたキャラクターとなりました。

そんな上総介広常ですが、このドラマで初めて知ったという方も多いのではないでしょうか。

源頼朝を描いた作品は数多くあれど、上総介広常を主要登場人物として描いた作品が少ないのがその理由かなと思います。

では実際、上総介殿の生涯はどのようなものだったのでしょうか。

『鎌倉殿の13人』は歴史を元にしたドラマであって、ドラマそのままの出来事が実際に起きたとは限りません。

そんな上総介殿の生涯を追ったのが本書。
初の評伝だそうです。

第一部では、平将門の乱平忠常の乱を扱い、房総の軍事基盤はどのようなものだったのかを説明しています。

ちなみに、平将門、平忠常。
この2人は上総介広常の祖先にあたります。

平高望
 |――――――――|
平良文      平良将
 |        |
 |       平将門
 |        |
平忠頼――――――春姫
     |        
    平忠常      
     |
    平常将
     |
    平常長
     |
    平常晴
     |
    平常澄
     |
    上総広常

そして第二部では上総介殿の人物像。
第三部では奥州藤原氏との関係などが説明されています。

ただ本書はあくまで専門書。
『源平盛衰記』などからの引用部分は漢字とカタカナで書かれ、現代文に訳されているわけでもないので、読みやすくはありません。

また『鎌倉殿の13人』同様、登場人物も多く比較的読むのが大変な本と言って良いと思います。

しかし一方で、上総介広常という人物にここまで詳細に迫った本はないのではないでしょうか。
上総介広常がどのような人物であり、どのような人生を送ったのか。
ドラマでは描ききれなかった上総介広常の生涯。それを知ることができる一冊です。

上総介殿が誅殺された1ヶ月後というタイムリーな時期に出版された本書。
これを運命と言わずしてなんと言いましょうか。

上総介広常の生涯に迫る評伝。
是非お読み下さい!

単行本

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。 好物は恋愛小説と生物学、哲学。BL以外はなんでも読む雑食。 一応、将棋のアマ二段。